ノーリア・スティーブンソン分類とは?心不全治療の判断基準

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ノーリア・スティーブンソン分類とは?心不全治療の判断基準
ノーリア・スティーブンソン分類とは?心不全治療の判断基準
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🎵 ノーリア・スティーブンソン分類とは?心不全治療の判断基準

救急外来や循環器病棟へ急性心不全の患者が搬送された際、瞬時の病態把握が生死を分けます。機器を用いた精密検査の結果を待つことなく、ベッドサイドの身体所見だけで患者の血行動態を4つの病態へ迅速に分類し、適切な初期治療を選択するフレームワークとして臨床現場で広く定着しているのが「ノーリア・スティーブンソン分類(Nohria-Stevenson分類)」です。

日本循環器学会の「急性・慢性心不全診療ガイドライン」でも重要な位置づけを占めており、医師だけでなく看護師のアセスメントツールとしても欠かせません。侵襲的な検査を伴わずに心不全の重症度と治療方針を導き出す本分類の仕組み、フォレスター分類との違い、そして現場での実践的な覚え方を徹底解説します。

📌 【この記事の重要ポイントまとめ】
  • 要点1:身体所見から「うっ血(Wet/Dry)」と「末梢循環不全(Warm/Cold)」の2軸でProfile A/B/C/Lの4つに即座に分類する。
  • 要点2:カテーテルを用いるフォレスター分類と異なり、非侵襲的にベッドサイドで迅速な初期対応(利尿薬・血管拡張薬・強心薬の選択)を可能にする。
  • 要点3:救急現場の約7〜8割を占める「Warm-Wet」の適切な薬物療法や、心原性ショックを伴う最重症「Cold-Wet」の初動対応を迷わず判断できる。

【基礎知識】ノーリア・スティーブンソン分類とは?身体所見で読み解く4つの病態

ノーリア・スティーブンソン分類は、急性心不全の臨床病態分類の一つであり、「体液貯留によるうっ血の有無(Wet or Dry)」と「心拍出量低下に伴う末梢低灌流の有無(Warm or Cold)」を掛け合わせ、患者の状態を4つのプロファイル(Profile A, B, C, L)に整理する手法です。

2000年代初頭にNohriaやStevensonらによって提唱されて以来、侵襲的な手技を行わずに問診・視診・触診・聴診のみで評価できる簡便性から、救命救急センターや一般病棟の初期対応において第一選択のトリアージ指標として活用されています。

4つの病態プロファイルは以下のように定義されます。

  • Profile A(Warm-Dry):うっ血なし・低灌流なし(血行動態は比較的安定、基礎疾患の調整や経過観察)
  • Profile B(Warm-Wet):うっ血あり・低灌流なし(急性心不全の約70〜80%を占める最多病態)
  • Profile C(Cold-Wet):うっ血あり・低灌流あり(心原性ショックを疑う最重症病態)
  • Profile L(Cold-Dry):うっ血なし・低灌流あり(循環血漿量減少や過度な脱水を疑う病態)

【見分け方の基準】「うっ血(Wet/Dry)」と「低灌流(Warm/Cold)」の身体所見

この分類を正確に行うためには、ベッドサイドで得られる身体所見を丁寧に見極める必要があります。特別な機器を使わず、数分間の診察で評価を下すための具体的なチェックポイントは次の通りです。

① うっ血のサイン(WetかDryかの判定)
肺うっ血や静脈系の圧上昇を示唆する所見を確認します。

  • 起座呼吸・発作性夜間呼吸困難:横になると息苦しく、座ると楽になる症状
  • 頸静脈怒張:座位または半側臥位で内頸静脈の拍動・拡張が明瞭に見える
  • 肺副雑音(ラ音):聴診器で両側下肺野を中心にプチプチ・パチパチという水泡音(Coarse crackles)や捻髪音を聴取
  • 下腿浮腫・腹水・肝腫大:体静脈系のうっ血による組織のむくみや腹部緊満感
  • 胸部X線所見:肺門部血管影の拡大、カーリーBライン、胸水貯留
これらが1つでも顕著であれば「Wet」、認められなければ「Dry」と判断します。

② 低灌流のサイン(WarmかColdかの判定)
心臓が全身へ十分な血液を拍出できているかを末梢の状態で評価します。

  • 四肢末梢の冷感・冷汗:手足を触ったときに氷のように冷たく湿っている
  • 末梢毛細血管再充満時間(CRT)の延長:爪床を圧迫して白くしたあと、ピンク色に戻るまで2秒以上かかる
  • 脈圧の狭小化・収縮期血圧低下:脈が触れにくい、脈圧(収縮期と拡張期の差)が30mmHg未満
  • 乏尿:組織灌流低下による尿量減少(0.5mL/kg/h未満)
  • 意識レベルの変容:脳血流低下による不穏、傾眠、せん妄
これらの循環不全所見があれば「Cold」、手足が温かく血流が保たれていれば「Warm」と判定します。

【徹底比較】フォレスター分類との違いとスワンガンツカテーテル非侵襲化の背景

心不全の血行動態分類として古典的に有名なのが「フォレスター(Forrester)分類」です。両者は同じ「4象限」の概念を用いますが、評価方法に決定的な違いがあります。

フォレスター分類は、スワンガンツカテーテル(肺動脈カテーテル)を右心房から肺動脈へ挿入し、直接測定した「肺動脈楔入圧(PCWP:18mmHgを基準)」とうっ血、「心係数(CI:2.2L/min/m²を基準)」と低灌流を定量的に評価します。集中治療室(ICU)での緻密なモニタリングには優れるものの、カテーテル挿入には時間と手技のリスクが伴い、救急現場での即時判断には適していません。

これに対し、ノーリア・スティーブンソン分類はフォレスター分類の2軸をそのまま「身体所見(フィジカルアセスメント)」に置き換えたものです。侵襲的な検査を待たずに数分でProfile A〜Lを導き出せるため、近年の心不全診療ガイドラインでも「まずノーリア分類で初期対応を決定し、難治性の場合にのみスワンガンツカテーテルを検討する」という流れが標準化されています。

【病態別初期対応】Warm-Wetの治療方針から最重症Cold-Wetの救命アプローチまで

病態プロファイルが決定したら、直ちにプロトコルに沿った薬物治療と呼吸循環管理を開始します。

■ Profile B(Warm-Wet):利尿薬と血管拡張薬の使い分け
血圧が保たれており(収縮期血圧100〜140mmHg以上)、肺うっ血が主体の病態です。過剰な体液を体外へ排出し、心臓の前後負荷を軽減させることが治療の柱となります。

  • 血管拡張薬(硝酸薬、カルペリチド等):血圧が十分にある場合、静脈還流を減らして前負荷を軽減し、後負荷も下げるため第一選択となります。
  • ループ利尿薬(フロセミド静注等):腎血流と尿量を確保し、水分を除去します。ただし過剰投与による脱水と腎機能悪化には注意が必要です。
  • 非侵襲的陽圧換気(NPPV):高度な呼吸困難がある場合、速やかにNPPVを導入して呼吸筋疲労を防ぎ、胸腔内圧を上げて静脈還流量を適正化します。

■ Profile C(Cold-Wet):心原性ショックを念頭に置いた救命対応
末梢循環不全とうっ血が重なり、収縮期血圧が90mmHg未満に低下しているケースが多い最重症病態です。血管拡張薬単独での治療は血圧をさらに下げて危険なため、強心薬や機械的循環補助を検討します。

  • 強心薬・昇圧薬(ドブタミン、ノルアドレナリン等):心収縮力を高め、重要臓器への血流を維持します。
  • 慎重な利尿:血圧と腎灌流圧を強心薬で底上げした上で、うっ血解除を試みます。
  • 機械的循環補助(IABP、IMPELLA、VA-ECMO):薬物療法に反応しない重篤な心原性ショックでは、迅速な補助循環装置の導入とカテーテル治療(PCI等)の鑑別へ移行します。

■ Profile L(Cold-Dry):適切な補液の検討
心不全の既往がある患者に利尿薬を過剰投与した場合や、感染症・下痢などによる脱水が合併した際に起こりやすい病態です。うっ血がないため利尿薬は即座に中止し、血圧や脈拍、下大静脈(IVC)径を心エコーでモニタリングしながら慎重な少量輸液(体液補充)を行い、前負荷を回復させます。

【実践のコツ】現場で迷わない「覚え方」と看護アセスメントの要点

救急コールが鳴り響く緊迫した現場で、分類のアルファベット配置を混同しないためのシンプルな覚え方があります。

【視覚的な配置の覚え方】
縦軸に「循環(上がWarm、下がCold)」、横軸に「うっ血(左がDry、右がWet)」をとった2×2の表をイメージします。

  • 左上(Warm-Dry)= Profile A(All right:問題なし・安定)
  • 右上(Warm-Wet)= Profile B(Bad / Basi-crackles:うっ血・最多パターン)
  • 右下(Cold-Wet)= Profile C(Critical / Shock:最重症・ショック状態)
  • 左下(Cold-Dry)= Profile L(Low volume:体液不足・脱水)
英語の頭文字と病態イメージを紐付けることで、当直帯や救急搬送時でも瞬時にProfileを脳内に描くことができます。

【急性心不全における看護アセスメントの重要性】
看護師は患者のベッドサイドに最も長く滞在するため、Profileの「移行」をいち早く察知する役割を担います。 例えば、Profile Bとして利尿薬を投与していた患者の手足が徐々に冷たくなり、尿量が落ちてきた場合は「Profile C」への悪化や「Profile L」への過度な脱水移行が疑われます。SpO2や血圧計の数値だけでなく、「足背動脈の触知」「四肢の皮膚温」「CRT」「呼吸パターンの変化」を五感で繰り返しアセスメントすることが、病態悪化の早期発見につながります。

【ノーリア・スティーブンソン分類】に関するよくある質問(FAQ)

Q1:ノーリア分類とクリニカルシナリオ(CS)分類はどう使い分けますか?
A1:クリニカルシナリオ(CS)分類は主に「来院時の収縮期血圧」を軸にCS1〜CS5に分ける手法で、救急外来での超初期対応(降圧が必要か、昇圧が必要か)の判断に適しています。一方、ノーリア・スティーブンソン分類は血圧に加えて末梢循環と体液うっ血の質をきめ細かく評価するため、病棟管理や治療効果のモニタリングまで包括的にカバーできる特徴があります。両者を組み合わせてアセスメントするのが臨床では効果的です。

Q2:高齢者で四肢が冷たい場合、すべて「Cold」と判定すべきですか?
A2:室温や末梢動脈疾患(ASO)、加齢による冷え性によって四肢末梢が冷えているだけのケースもあります。真の低灌流(Cold)かどうかを見極めるためには、単に指先を触るだけでなく「大腿部や膝周囲の温かさ」「意識レベルの清明さ」「直近の尿量」「脈圧が極端に狭くないか」など、複数の臓器灌流サインを統合して慎重に評価してください。

Q3:Profile L(Cold-Dry)の患者に利尿薬を使ってしまった場合はどうなりますか?
A3:Profile Lは循環血漿量が不足している状態のため、利尿薬を使用すると脱水がさらに進行し、血圧低下や急性腎障害(AKI)、心原性ショックを誘発する恐れがあります。Dry(うっ血なし)を確認した際は利尿薬を中止または減量し、必要に応じた補液への切り替えが必要です。

まとめ:迅速なフィジカルアセスメントが救命率向上の鍵を握る

ノーリア・スティーブンソン分類は、高度な医療機器や侵襲的な検査に頼ることなく、診察技術だけで急性心不全の血行動態を的確に把握できる極めて実践的な指標です。身体所見から「うっ血(Wet/Dry)」と「低灌流(Warm/Cold)」の2つの軸を迅速に評価することで、利尿薬・血管拡張薬・強心薬の適切な選択が可能になります。

高齢化に伴い心不全パンデミックが叫ばれる中、ベッドサイドでの五感を通じたアセスメント力はこれまで以上に重要視されています。日々の臨床や看護ケアにおいて本分類を意識的に活用し、病態の変化に即応できる体制を整えていきましょう。 (出典: ノー リア スティーブンソン 分類(Yahoo!ニュース))

ノー リア スティーブンソン 分類
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